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日焼けをしない白い肌に、少しウェーブがかった漆黒の髪は、重く硬い印象を他人に与える。生まれつきの三白眼がお世辞にも柔和とは言えない雰囲気を醸し出すものだから、普通にしているだけでも「目付きが悪い」だとか「睨まれた」だとか、心ない低評価をつけられた。 それが嫌で人に目を見られないよう前髪を伸ばせば、今度は「暗い」だとか「陰気」だとか。 元々の人見知り癖がとどめをさして、人目を避け始めた頃から姿勢はどんどん猫背になり、高校生になる頃には既に友達と呼べる人間なんて片手に足りないくらいだった。 「怖い」「何を考えているか分からない」「暗い」「気持ち悪い」。 誤解を解くにも、既にそのレッテルを通されているものだから、うっかり人に近寄ることすら許されない。 そのうち段々と自分はそんな人間なんだと諦めを感じるようになり、人と距離を取るようになった。周囲の声に耳を塞ぎ、敢えて人と親しくなることを避けた。 人を嫌いになったのではない。 むしろ嫌いになったのは、いるだけで人を不快にさせてしまう、こんな自分自身だった。 こんな自分が、誰かに傍にいてほしいなんて、望むことすら烏滸(おこ)がましい。 誰かが、自分と親しくしてくれるかもしれないと期待することを止めてしまったのだ。 そんな行真に、こんな場所で帰りを待つ人物などいるはずもない。 この知らない人物が、部屋を間違えているに違いない。 声を掛けようとして躊躇する。 男は本当に良く眠っていた。 閉じられた目でも分かる、睫毛の長さ。 ネックウォーマーに口元が覆われていて、目の周囲くらいしか肌が晒されていないけれど、透き通るように白い。 思わず見蕩れそうになっている自分に気付いた。 3a6e2460-a959-42df-84c3-adce257b1e3c
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