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「嘘をついて、ごめんなさい……。……ほんとのことを言ってゆくまといられなくなるのがどうしても怖くて」 「……」 「でも、僕はずっとずっとずっとゆくまに会いたかったから……」 そのままクロは、街中を探しに探して、ついにパチンコ屋で働く行真を見つけ出したのだと言った。でも、料理屋を辞めてからますます下を向くようになった行真は、クロに気付くことがなかったらしい。 「ずっとゆくまに気付いて欲しかった。でも僕は成長しても身体がチビだったから、どれだけ鳴いてもゆくまは気付いてくれなくて」 「……」 うるさい職場と、やり過ごすだけの毎日に、小さな声を聞き逃すくらいに心の余裕を無くしていたことに今頃になって気付かされる。 存在を素通りしていた自分の前で、ずっとずっと、自分を探していたというクロの言葉に、胸が音を立てた。 「嘘をつくの、苦しかった。ここに来て、ゆくまはいつも優しかったから。ゆくまが作ってくれるごはんも、ゆくまの服も、お布団も全部全部、あったかいから好き……」 クロの目から零れる涙が、行真の服を点々と濡らす。 「……ゆくまが、好き……」 涙と共に溢れ出すように零れたその言葉を聞いた瞬間、行真はクロの頭の後ろに手を伸ばし、胸の中へとぎゅぅ、と抱き締めていた。 「……っ、ゆくま……」 行真の胸に触れたクロの頬。重なり合った身体から、互いの鼓動が伝わる。 温かくて、柔らかくて、早い音。 2つの別々の音が重なる。 「……そんな、何もかもをいっぺんに信じろっていうのは難しいかもしれねーけど……」 でも確かに、クロは腕の中にいる。 そして、こんな自分を好きだと言う。 ……もちろん、自分が想っている好きと、クロの言う好きは違うのだろう。 そこを履き違えるほどバカではない。 それでも長い間、誰からも必要とされなかった自分を、探してまで見つけ出してくれた。 不可思議だろうと非常識だろうと超常現象だろうと。 クロに傍にいてほしいと思うには、それだけで十分だった。
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