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「……っ、クロ、もうちょっと力抜けるか? 」
「ん……、わかんないっ、どうしよう」
『はじめて』ということがお揃いの二人。
スムーズに事なんて進むはずもない。
宛がったはいいものの、そのキツさが邪魔をして、先がなかなか上手く挿入っていかない。
それもそうだ。自分も経験はないし、クロも元はといえばオス。挿入られる方なんて慣れてないはずなのだ。
少しずつ腰を進めようとはするものの、狭い場所に跳ね返されるように押し返される。
未知のキツさに、行真自身もこの先をどうしたものかと躊躇してしまう。
ふいに目の前でゆらゆらと揺れていたしっぽが、ぺたんと元気を失くしているのが見えた。申し訳なさに胸が痛む。
今日はこれ以上は無理かもしれない。 そう思い、せめてもの労いの意味を込め、元気を失くしたそのしっぽを優しく優しく鋤いてやった。
「ん……」
すると、心地が良かったのかしっぽを撫でるに連れ、どこか強張っていたクロの身体からすっ、と力が抜けていった。
ぺたんとしていたしっぽが、再び心地良さそうにゆらゆらと揺れ始める。
同時に、ガチガチに入っていたお尻のあたりの力が抜けて、押し返されてばかりの先がつぷ……とさらに中に侵入していった。
「ふ……っ」
温かくて、絡み付くような感触に思わず息が漏れる。
こんな刺激は知らない。
本能のままに、このまま突き動かしたくなる衝動を必死で耐えた。
「大、丈夫か……?クロ……」
「んっ、……ぅん……」
四つん這いの態勢で突っ伏しているから、クロの表情は見えない。微かに上下する肩が呼吸の荒らさを物語っていて、痛みを我慢させていることに胸が痛む。
「痛い?痛かったら抜くから」
ゆっくりと進ませた熱は半分以上クロの中へと入りこんでいた。
凄まじい快感と、クロへの想いと、自分が挿入していることへの罪悪感。
それらが混ざりに混ざって、このまま進むべきなのか止めてしまうべきなのか、分からなくなる。
悩んでいるところに、
「やだ、やだ抜かないで、ゆくま。痛くない。気持ちいぃ……。……嬉しい」
振り向いたクロがそう告げた。
赤く頬を紅潮させ、熱を含んで目尻に涙を浮かべた目が、優しく行真を捉えている。
━━大好きな行真と一緒になれて嬉しい。
潤んだ声で、クロは言った。
「……俺も」
返した言葉がどこまで声になっているかはもう、まともに考えられるはずもなかった。
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