第三章

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部屋を出て暫く、道筋は把握しているため迷いなく進むふたり。 途中何度か組員と遭遇しかけたが、身を隠しなんとかやり過ごしていた。 何やら皆、慌ただしく移動しているのもあってバレずに済んでいる。 見つかるのも時間の問題かと思ったが、これならそのまま突破できるかもしれない。 しかしなんだか嫌な予感がして、蓮華はポツリと呟いた。 「なんでこんな騒がしいんだ?」 「あぁ、そりゃきっと…」 蓮華の疑問に陸兎が答えようとしたその時。 荒々しい足音がいくつも聞こえて来て、ふたりは咄嗟に身を隠す。 様子を伺うと、大勢の組員が何かを追いかけるようにして走っており、その先には──小雨の姿。 「うげっ、アイツ見つかりやがった!」 「ちっ。陸兎、出るぞ」 ひとりでも見つかればどうしようもない。 少し強引な手であるが、策はあった。 「こんな状況で出るのかよっ?異能使えば切り抜けられるだろうけど、殺しかねないぜ?」 恐らく、組員たち、そして司祭も異能を持たない人間だ。 異能持ちは確信まではいかないが、身に纏うものでなんとなく識別することはできる。 同族故に引かれ合うものがあるのか、なんなのかは分からないが。 相手方に異能持ちはいない。 陸兎の考えはもっともであり、蓮華自身も武力を持って解決する気はなかった。 「さっきの銃用意しとけ。言ったろ、一芝居してもらうって」 そうして陸兎に指示を出す。 その内容に陸兎は盛大に顔をしかめたが、次には大きく溜息を吐き──蓮華の首に腕をグッと巻き付けた。 「おらおらテメェらぁッ!!」 響き渡る怒号に、組員らが何事かと視線を向ける。 その先、蓮華を引き寄せ頭に拳銃を突き付けた陸兎が、再び声を上げた。 「動くんじゃねぇぞ!この坊ちゃんのお綺麗な顔が吹き飛ばされたくなかったら、言う通りにしてもらうぜ!」 悪党になりきる陸兎を、蓮華は横目で見遣る。 自分を使って組員を脅せとは言ったが、これじゃあ何処ぞのチンピラだ。 威厳のなさに呆れてしまう。 「小物っぽい」 「うるせぇ…ッ」   
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