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「ほう…、これは素晴らしいな」
蓮華の容姿に、男は感嘆の声を漏らした。
周りの白のローブを身に纏った者たちも、食い入るように蓮華を見つめる。
纏わりつくような視線が不快だった。
大勢に囲まれ、まるでサーカスの見せ物になったような気分になる。
コイツらのような人間は、その醜い自尊心でこちらを捩じ伏せようとする。
この身を、心を、我が物顔で支配しようとする。
そうすることが当然だと信じて疑わない。
はなから奴らは、こちらを人とも思っていないのだろう。
芸をする動物に手を叩いて喜んでいるのだ。
『自分の意志など捨てろ。その身は、その力は、我らのためにあるのだから』
遠い過去の記憶が蘇り、蓮華はギリッと歯を噛み締めた。
くそったれ。虫唾が走る。
だから決めたのだ、こちらを馬鹿にする奴らを見返してやると。
下に見て油断しているのなら、逆に欺き、利用してやる。
そうして愚かさを知らしめてやるのだ。
目の前に立つ男は恐らく、この組織でも地位のある者だろう。
運が良ければここのボスだ。
建物の構造上、そこまで大きな組織形態でもないようだから、その可能性は大いにあった。
取り入るには絶好のカモ。
一度顔を俯けた蓮華は、次にはキュッと眉を下げた無防備な表情を浮かべ顔を上げた。
「ぼく、どこかに売られるの?」
まずは少しでも情報を得るため相手を油断させようと、多少大袈裟に幼い演技をする。
瞬間、何故か目の前の男の目つきが変わった。
「ショタ…」
「え?」
「いや、なんでもないよ。あぁ、この子の拘束を解いてあげなさい。大丈夫、売ったりなんかしない。寧ろこれは救済さ」
「きゅうさい?」
「禊ぎを終えた私たちと触れ合えば、まだ成人していない子供なら邪を取り払うことができる。私たちは邪に囚われた子供たちを連れてきては、そうして救済しているのさ」
デタラメな説明を、無防備な表情はそのままに、心中では冷徹に判断する。
要するに宗教だとかと理由をつけて子供とヤリたい奴らの集団ってわけだ。
「わ〜、すごいね。みんないい人なんだ」
頭の中での暴言とは打って変わって、アホっぽく拍手をし笑って見せれば何故か頭を撫でられた。
男のこちらを見る目がやたらと生暖かい。
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