第三章

13/19
前へ
/71ページ
次へ
手招きをする司祭を本能が拒絶する。 ソファから立ち上がり後退りする蓮華に、司祭は困ったような顔をした。 「いくら君でも最低限の検査は必要だ。そうしなければ儀式が行えない」 しなくて結構と声を大にして言いたいが、新たにやって来た2人の男たちに意識が向いた。 諦めた司祭は、そのまま3人の団員を引き連れて室内に戻ってくる。 本気でこのまま逃げようかと逡巡したが、結局先程の結論に辿り着きその場に立ち尽くした。 目の前で立ち止まった司祭をキッと睨み上げる。 せめて心だけは屈せずにいたかった。 両側から男が来たと思うと、服を剥ぎ取ろうとする。 咄嗟に抵抗しようとすると両腕を掴まれた。 そしてそのまま取り出した刃物で衣類を引き裂かれる。 「乱暴に扱ってはいけませんよ。傷ひとつ付けないように」 ただこちらを眺めるだけの司祭が穏やかな声で支持する。 彼の目は一見優しげで慈愛に満ちたものだが、その奥には(おぞ)ましい何かが潜んでいるようだった。 慣れた手つきで一糸纏わぬ姿にされる。 両腕は掴まれたまま、裸体を隠す術もない。 それからは体を隅々まで湿った布で拭かれ、何かを確認するように観察された。 羞恥、恐怖、怒り。 さまざまな感情が渦巻き、蓮華は体を震わせる。 「傷跡が所々見られますね」 「そうですか。汚れた世の中では仕方のない事ですが、やるせないですね。張りがあって程よく引き締まった、美しい体なのに」 舐めるような司祭の視線に、堪らず顔を逸らしていた。 コイツなど、穢れた世の中そのものではないか。 自らが崇高なものだと本気で信じているのならば、とんだ狂人である。 「…っ!?」 その時突然、尻を撫でられた。 いやらしい手つきに怖気が立つ。 背後に立つ3人目の男だ。 耳元から生暖かい、不快な息遣いを感じた。 「おぉ、なんて滑らかな肌だ。こんなの女の体でだってそうお目にかかれないぜ」 「言葉を慎め、司祭様の前だぞ。お前は自分の役割をこなせ」 「はいはい」
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加