第三章

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「……おい小雨」 「……はい」 会話を聞いた2人は短く言葉を交わし、再び歩き出す。 そうして見張り2人の前へ堂々と姿を表した。   「なっ、だ、誰だお前たちは!?」 突然の部外者に見張りが動揺を見せる中、陸兎はニコリと笑みを浮かべる。 「あのー、すんませーん。ちょっと今の話…」 言いながら陸兎はパンッ!と掌に拳を打ち付け、笑顔はそのまま凍てついた目を見張りに向ける。 「詳しく聞かせてもらおうか?」 *** 案内された部屋には、言われた通り10代の子供が複数人いた。 それぞれあてがわれたベッドに座っている。 皆足に繋がれた鎖によって、その場から動けないようだ。 周りの子供達からの視線を感じながら、蓮華も空いているベッドへと片足に付けられた枷から鎖で繋がれる。 「すみません、少々不憫ですが我慢して下さいね。また近いうちに呼びにきますから、それまでいい子にしていて下さい」 先程の出来事のショックで激しく疲労した蓮華は力なくベッドに倒れ込んだ。 頭上からする声にも無反応でいると、やがて男たちの足音が遠ざかって行く。 しばし部屋に静寂が続いた。 皆好奇の目を向けてきているのは分かったが、それに反応するのも気怠く瞼を閉じる。 「お前、男だよな」 声がした。 それが自分への声かけだと気付き、視線だけ声の方に向けると、隣のベッドの少年と目が合う。 自分と同い年か、少し上か。 少年から青年へと移り変わる年頃、幼さと凛々しさが混同した容姿をしていた。 短く黒い髪だからか、少し陸兎に似ている。 そんなことをぼんやりと考えていると、なんだか沈んだ気持ちが軽くなるようだった。 きっとあの間抜け面を思い出したからだなと、自然と緩んでいた口元に手を当てる。 そして話しかけられたことを思い出し体を起こすと、相手は此方を興味深そうに眺めていた。 「驚いた。笑うと一層美人が際立つな」 「……さっきのだが、俺は男だからな」 「だろうな。司祭直々にここへ連れてくるなんて、お気に入り確定だ。司祭はな、女より男の方が好みなんだよ」 「……全く嬉しくない情報だな」
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