不香花

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「あれから10年か。そんなに経ったんだなー」 10年も離れることなくお互いを想い合ってきた。 こんなにも大事な人が俺にできるとは思ってもいなかった。 その瞬間、風がぶわっと吹き抜け瞬く間に銀世界になる。 「うー寒みぃー、風邪引く前にとっとと帰るか」 子供のように温かい手を取り、自分のポケットに突っ込んだ。 「お前はあったけぇな。カイロ要らずだわ」 ギュッと握ると握り返してくる手。 そんな単純な事で心も温かくなった。 これを言葉で表すならただ… ーー愛しい  繋いでいないもう片方の手で頬に触れれば、一瞬肩をびくっとさせるも紅潮させた顔で見上げてくる。 潤んだ瞳に吸い寄せられるように、 互いの体温を分かち合うようにゆっくりと口づけた。
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