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不香花
不香花。
このように書いて「ふきょうのはな」と読む。
香りの無い花のことをさす。雪を花と見て言った言葉。
目の前に大きな桜の木があった。
樹齢何年くらい経っているのだろう、とても大きかった。
春になれば花を咲かせるその桜はこの時季だけにしか見られない光景があった。
それは真っ白な雪が1本1本の枝に降り積もり、まるで花を咲かせたような姿になるのだった。
「きれいだな…」
それが陽に反射されキラキラと光っていた。
圧倒された。息を飲むほどに風光明媚な景色だった。
辺り一面には沢山の雪が積もっていて、まだ誰も足を踏み入れていないまっさらなその場所に踏み入れたくなる。
触らなくても分かるくらいにふわふわしていた。
そんな降り積もった雪を見て懐かしくなった。
10年前の出会った日を。
あの忘れられない日々を。
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