アンドロイドの涙

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あれから萩野さんは少しづつだが人としてみんなと接する様になっていた。 デイリーの1か月が終わる最終日、パン売場のバックルームに行った。棚の向こうから話し声がする。 萩野さんとサチさんの声だ。 「あのくそばばぁ!サチさんありがとうございます!助かりました」 「いやいや、でもワケわかんなかったよね」 2人の笑い声がする。 「楽しそうだね」 「あっ、秋月ちゃん。聞いてよ!アンドロイドがね、お客様に捕まって『私は1週間に1度しか買い物しないの!だからパンの賞味期限7日の売りなさいよ!』って」 「ぷはぁ~っ!」 私は吹き出した。 「それで?」 「でね、アンドロイドが困ってるから私が言ってやったのよ『お客様、このパンがお好きなんですよね?そうしたら防腐剤やら何やらを入れて作らなきゃならなくなるから味かわっちゃいますよ?』ってね」 「ホント、サチさんに助けられました!ハハハハハ!」 半月前迄のアンドロイド萩野は確実に変わっていた。 あの涙で萩野さんの心の壁が溶けた。 「萩野さん、今日でデイリー終わりだね」 サチさんが寂しそうに 「アンドロイド!頑張るんだよ」 「はい、ありがとうございました」 「萩野さん、明日からレジに入って頂きます。社員は本来はレジに入らず人を回すのが役目ですが、お客様がどんな商品を何と一緒に買ってるかとか、何が売れているのかとか、レジに入ればわかります。カゴの中には沢山の答えがあります」 「答えですか?」 「そう、これからの萩野さんに役立つ答えが沢山!」 萩野さんはピンと来ないのか不思議そうに頷いていた。
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