アンドロイドの涙

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「忙しいのに悪いな」 店長に言われ 「いえ、大丈夫です。ご用とは?」 「ああ、秋月さんは萩野さんがいるプロジェクトの概要は知ってるよね?」 「はい、従来の青果売場から入って買い進み、潰れない様にと最後にパン売場がある、スーパーの機能を中央に集約し、回りに食品の展示会の様なブースを作りイタリアン、中華等テーマ毎の売場を作るって計画ですよね?」 「そうだ、秋月さんはどう思う?」 その言葉を聞き萩野さんの目が私に向けられた。 「ここみたいな高所得者が多い様な所とか、立地さえ間違わなければ当たると思います……それが何か?」 少し言いにくそうに店長が話し出した。 「実は、萩野君が君も新しいプロジェクトに参加出来る様にしてくれないかと頼まれてね……」 「そうですか……」 私は少し考えて 「店長あの話し、していただけますか?」 私の頼みに店長が頷いた。 「実はね萩野君、秋月さんはお母様が重いご病気で、仕事の日は施設にお願いしてるんだが、休みの日は秋月さんと一緒に居られるのが唯一の生き甲斐なんだよ。この仕事ぶりだ、プロジェクトの話しも声はかかったがそういう理由で断った。その代わり、関わる社員のお手伝いはいくらでもしますと……。だから君には厳しくしたし、必要と思われる事をカリキュラムに入れた。君がプロジェクトを引っ張る社員になって欲しいとね」 「えっ?そうなんですか?」 萩野さんの視線を感じたが、私は萩野さんの気持ちに応えられない悔しさと悲しさで涙を堪えるのがやっとで、そちらを見る事もなく頷いた。 「わかりました。そうとは知らず、申し訳ございませんでした」 私は声を絞り出し 「謝らないでください。その代わり絶対成功させてください」 そう言って事務所を出た。 それから2日後、萩野さんはこの店を出て行った。 私に始めて見た時の稲妻の様な感覚の不思議だけを残して……。
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