アンドロイドの涙

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「何?萩野さん」 私が聞くと、少し動揺した顔で 「私が会社から頂いたプログラムですと全て1ヶ月単位で各売り場6部門で半年と周知を受けております」 「それで?」 「今のお話しですと生鮮3部門は半月とおっしゃってましたが」 「そうよ、それが?」 「そうだと他のプロジェクトメンバーとの差が…」 説明をしようとする私を店長が制し、自身で説明を始めた。 「萩野さん、皆と同じでいいの?秋月さんは君がこれから手掛けるプロジェクトを熟知した上で現場で本当に役に立つ為の教育プログラムを作ったんだ。私も了承した。それが嫌ならば他のプロジェクトメンバーと交代しても構わないが?」 私は店長にお礼の意味で頭を下げた。 すると惣菜マネージャーが 「萩野さん、心配しなくても大丈夫。半月で1ヶ月分、ちゃーんと教えるから!」 「えっ?って事は……」 鮮魚マネージャーが「嫌か?」 「い、いえ…」 萩野さんは少しうつむいて蚊の鳴く様な声で返事をした。 「では、ミーティング終わり!」 店長の声で皆立ち上がりガタガタと椅子をしまい解散した。 訳がわからないのかまだ座っている萩野さんに話しかけた。 「先ずは青果です。店の入り口を季節のフルーツでインパクトを出し、季節野菜や土物の扱い、産地表示等を学んで下さい」 「は、はい…」 「後は店にとっての青果売場の役割。競合対策の価格で集客、店全体の売上を左右する食材」 「青果が店全体の売上を左右?」 萩野さんは驚いて私を見た。 「んーっと……例えば白菜がなかったら鍋商材が売れなくなるでしょ?肉も魚もつゆも豆腐も」 「あっ、そうですね」 「社員は作業を出来る事よりも売場をどれだけ理解しているかなの……じゃあ、今から1時間売場を回って、終わったら声をかけて下さい」 「はい…」
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