アンドロイドの涙

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私はミーティングが終わりシスター室に行った。 さっきの稲妻はなんだったんだろうの疑問を抱きながら、シスターに聞いてみた。 「シスター、あの萩野さんの社員カード届いた?」 「はい、今さっき…読み上げましょうか?」 「お願い」 「萩野卓、32歳」 「げっ!私といっしょ?」 「みたいですね」 シスターは咳払いをひとつして 「では……国立○○大学卒業後、大手外食産業○○に入社。コロナ不景気により当スーパーへの集団出向となり、亀有店に勤務中、当スーパーの社員登用制度を知り、小売り業界に興味もあり会社を退職しパートとして入社。新プロジェクトメンバー募集に応募し選出と同時に社員になる……ですが……」 「はぁ~超一流大学から大手企業か……」 「はい、何か?」 母親ほどの年齢のシスターは優しげに私の表情を伺っている。 「ちょっといい男ですものねぇ…ホホホ!」 「違うってば!さっきのミーティング、いかにもレールの上を走って来ましたみたいな感じだったから納得しただけ」 「あぁ、時代が生んだアンドロイドですね?」 私はシスターの言葉に驚いた。 「アンドロイド?」 「そうです、私は感じましたよ。感情を表に出さない人の形をしたロボットみたいって」 アンドロイドかぁと呟きながら事務所に戻ると、店内を見て回っているはずの萩野さんがパソコンキーを叩いている。 「あれっ?」 「あっ、売場は見て来ました。先程のミーティングの記録と売場の記録。あと店の数値を検証してます。PDCAの為に」 「はぁ…」 確かにアンドロイドかもしれない……。
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