アンドロイドの涙

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萩野さんが来て2ヶ月が経った。 青果では葉くずに紛れながら必死に品出しをし、売場を作り。 鮮魚では緑のまな板がアニサキス対策だと知り驚き、惣菜では異物混入対策だと青い手袋を見て感心し。 肌身離さず持っているメモ帳にメモをし、黙々と業務をこなす。人当たりは悪くないが、どこか人間味が無い。いつしかアンドロイド萩野と誰もが言う様になっていた。 加工食品分に入り込み半月。 萩野さんはロボットの様に発注をし、品物を並べている。 「どう?萩野さん加工食品部は」 「はい、勉強になります。こんなにいっぱい調味料があって」 「そうだよね?萩野さんがする提案型食品スーパーには欠かせない部門だもんね?」 「はい、なんか色んなアイディアが湧いてきます」 アンドロイドが少し笑った。 「萩野さんご飯は?未だなら行かない?」 「は、はい!秋月さんとご一緒なんていいんですか?」 ん?また笑った。 社員食堂に入ると一斉に視線が集まった。ひそひそと声が聞こえる。 「秋月さんとアンドロイドだって」 よっぽど不釣り合いなのか、少しその視線を邪魔に感じた。 メニューは和食、洋食、麺類の日替わり。萩野さんは焼魚定食、私はロコモコ丼を選び窓側の2人掛けの席に座る。 「なんか、景色もいいしデートしてるみた……いけない、いけない、社員がこんな事言ったら駄目だ」 私は聞こえないふりをしていただきますと手を合わせた。 萩野さんの魚の食べ方を見ると育ちの良さが伺われる。大切に育てられたのだろ。だからこうなっちゃったのかな?と頭を過る。
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