アンドロイドの涙

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研修の折り返しに来た事もあり店長に呼ばれた萩野さんが事務所に来ていた。仕事の話しは終わり雑談をしている。 「萩野君は彼女とかいるの?あっこれ聞いちゃいけない部類の質問だっけ?」店長が言うと。 「いえ、いません。例えいいなと想う人がいても一人前になるまでは……」 「そっか…いい心がけだ。所で秋月さん、萩野君に何かあるかね?」 近くのデスクで仕事をしていた私に意見を求めて来た。 私はそちらに向き直り 「楽しそうなお話しに水を差す様ですみませんが、萩野さん豆腐の在庫がダブついていますけど何故?」 「はい、マニュアルを参考に気温等を考えて発注したんですけど余ってしまって」 「ふ~ん、マニュアルねえ……パートさん達と相談した?」 「いえ……パートさんにですか?」少し驚きと不思議が混ざった顔で私を見た。 「最低気温が18度を下回るとおでん。15度以下になるとお鍋の具材が売れるの。これはマニュアルにも書いてある。でもね前日が10度か20度かで体感温度とは違う、マニュアル通りに行きません。豆腐は暑くなると絹、寒くなると木綿が売れるの。でもこれは何度になったらとはマニュアルには書いてない」 メモをしている萩野さんの手が止まり私を見た。 「おでんの目安も豆腐の切り替え時期も経験を積み重ねているパートさんの感覚に勝るものはないの。マニュアルだけで商売は出来ないよ?お客様をお迎えするのは人なの!マニュアルを叩き込んだアンドロイドじゃない!」 店長と萩野さんは固まってしまった。 キツイ様だけどわかって欲しい。壊れる前に……。 その気持ちが高まっていた。自分でも何故だかわからなかった。
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