命の願い

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「それと自殺した場所だけどさ」  喉に痛みが走った。手足の痺れと痛みはゆっくりと全身へ侵食していく。 「塾の屋上から飛び降りたんでしょ。どうしてわざわざ通っている塾で」 「そんなの私には分かんないよ」  香穂ちゃんの瞳が潤みはじめた。 「近くには彼氏がいたんでしょ。彼氏がそばにいたのに飛び降りる理由ってさ」  浮気をした、もしくはひどい別れ方を切り出した彼氏への悍ましい当てつけ。  清美さんの心は悲しみと憎しみに支配されていた。  一生あなたが忘れられない女になってやると、命を絶つことでそれを実行したのかもしれない。  それは僕の考えすぎかもしれない。  物証もない。  けど、僕は限りなく確証に近い考えを伝えた。  それを聞いた香穂ちゃんの顔は歪みはじめていく。 「そんな・・・・・・そんな」 「だから・・・・・・」  呼吸が苦しくなってきた。何とか言葉をつなぐ。 「香穂ちゃんが清美さんを殺したわけじゃない」   僕は端末に写る彼女を見ながら動かない。いや、動けなかった。  できれば今すぐ、彼女の髪の毛を撫でて、抱きしめて、もう大丈夫だよとキスをしたい。  だが、すでに終わりを予期していた。 「かほ・・・・・・ちゃん・・・・・・」  我ながら情けない声が出た。 「何?」  僕は最後の力をふりしぼった。 「もう一度、メモリーを演奏してくれないかな」
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