命の願い

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「ねぇ、香穂ちゃん」 「なに」 「どうして、こんな暗い性格の僕と付き合ってくれたの」 「暗いなんて思ったことないわ。宗一郎くんは誠実なんだよ」  どんな暗闇も照らすその笑顔に僕は何度も救われてきた。  けど今、悲しい予感が僕を襲っている。  高校を卒業しても仲良くしようねと約束していたのに。香穂ちゃんには申し訳ないと思う。  彼氏の僕が先に逝くなんて。  僕はゆっくりと時間をかけて、左手を端末へと向ける。  どうしたの、と問うような彼女の視線に、僕は口を開く。 「香穂ちゃんの心の荷物。僕が向こうの世界に持っていくよ」  確信があったわけではないが、彼女の心の荷物を少しでも支えたいと思った。 「死ぬみたいなこと言わないでよ」 「僕の考え過ぎかもしれないけどさ。君は何かを背負って生きているように感じるんだ」  香穂ちゃんの瞳が揺らいだ。  卒業証書とフルートを机に置くと、乾いた唇がわなないた。  すっと息を飲む気配がした数秒後、 「実はわたしね。親友を殺したことがあるの」  闇に沈む小箱から恐る恐る何かを取り出すように、彼女は打ち明け始めた。
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