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高校一年生の頃、遠藤清美というクラスメイトがいた。
香穂と同じくフルートを吹く事が好きで、すぐに打ち解け親友になった。
学校ではいつも一緒で、お互い吹奏楽部に入部する。
ある夏の部活終わり。
夕暮れの河川敷で清美が尋ねた。
「香穂って好きな人いるの?」
思春期の女子だ。話題は当然恋の話になる。
「いるよ」
「誰、誰」
清美は前のめりになり、黒いロングヘアーを耳にかける。
「ええっと・・・・・・吉井宗一郎くん」
「え!? マジ? 意外だなー」
「なんでよ」
「吉井くんって、大人しいっていうか、暗くない?」
「まぁ、底抜けに明るいわけじゃないけどさ。すごくハートがある人だよ」
「そうなの」
「誰かが学校休んだらノートを貸しに行ったり、みんながやらないロッカー掃除も一人でやってたり、絶対に人の悪口言わないんだよぉ」
「ふふ」
清美は微笑み、香穂の顔を凝視した。
「な、なによ」
「香穂。今すっごく幸せそうな顔してる」
夕日に染まった清美の顔半分が、妙に香穂の心に残った。
恋愛話で盛り上がる。そんなふうに、私たちはどこにでもいる普通の高校生だった。
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