命の願い

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 *  高校一年生の頃、遠藤清美というクラスメイトがいた。  香穂と同じくフルートを吹く事が好きで、すぐに打ち解け親友になった。  学校ではいつも一緒で、お互い吹奏楽部に入部する。  ある夏の部活終わり。  夕暮れの河川敷で清美が尋ねた。 「香穂って好きな人いるの?」  思春期の女子だ。話題は当然恋の話になる。 「いるよ」 「誰、誰」  清美は前のめりになり、黒いロングヘアーを耳にかける。 「ええっと・・・・・・吉井宗一郎くん」 「え!? マジ? 意外だなー」 「なんでよ」 「吉井くんって、大人しいっていうか、暗くない?」 「まぁ、底抜けに明るいわけじゃないけどさ。すごくハートがある人だよ」 「そうなの」 「誰かが学校休んだらノートを貸しに行ったり、みんながやらないロッカー掃除も一人でやってたり、絶対に人の悪口言わないんだよぉ」 「ふふ」  清美は微笑み、香穂の顔を凝視した。 「な、なによ」 「香穂。今すっごく幸せそうな顔してる」  夕日に染まった清美の顔半分が、妙に香穂の心に残った。  恋愛話で盛り上がる。そんなふうに、私たちはどこにでもいる普通の高校生だった。
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