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宗一郎と付き合い三日後。
そのことを清美に報告すると、一緒になって喜んでくれた。
幸せの波は続き、一週間後、清美も彼氏ができたと教えてくれた。
年上の彼氏で、写真を見せてもらうとハッとなるほどの美男子だった。
だが、青春の甘い蜜は時に苦いこともある。肝心のフルートのことで亀裂が走った。
フルートのコンテストの日だ。
当日の朝、清美は時間ギリギリで会場にやって来た。
彼氏である塾の講師(大学生)が車で送ってきたのを覚えている。
よほど緊張していたのか、清美の顔色はすぐれなかった。どんな時も白い花のように可憐な笑みを見せる清美とは別人のようだった。
そんな調子で演奏のパフォーマンスは大丈夫なのだろうか。
その杞憂は悪い現実となる。
優勝候補とまでいわれていた清美の演奏はボロボロだった。
誰が聴いてもミスが目立つ演奏で、リズムもテンポも肩輪を失った車のようにガタガタとひどかった。
注目されたことによるプレッシャーが大き過ぎたのかもしれない。
演奏終了後、控え室で清美は膝から崩れ落ちていた。
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