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「その彼氏って、美男子だったんだよね」
「うん。すっごくイケメン」
「イケメンで、年上で、塾の講師で、車を持っている。ここまでのステータスって女子高生には眩しいと思うんだ」
「宗一郎くん。ひがんでるの?」
「ちがう。こんなこと言うのは何だけどさ、清美さん騙されていたんじゃないかな。その彼に」
「もう切るよ・・・・・・」
香穂ちゃんは僕を睨んだ。
「待って。切らないで。もう少しだけ話を聞いてほしい」
「・・・・・・」
鼻から息を漏らす音が聞こえる。
「考えすぎかもしれないけど、清美さんが見たスマホの内容は、彼氏からの別れの内容か、他にも付き合っている人間がいたとか、そんなところだと思う」
「宗一郎くんの妄想は国宝級ね」
香穂ちゃんの嫌味をグッとこらえる。
彼女は“自分のせいで親友は死んだ”という呪縛にかかっている。
「優勝候補とまでいわれていた清美さんがコンテストでボロボロだった。それはフルート以上に好きなものが見つかったからなんだよ。それが彼氏の存在」
「だったとしても」
「だからつまり、自殺の理由は・・・・・・フルートではなくて彼氏ということなんだよ」
香穂ちゃんは唇をかみしめた。
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