キャットゲート

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『あれ~。昨日の当番は派遣のブチくんだよね~。ゲート開きっぱなしだったよー』  ブチくんは反論するかもしれないが、役職者のシャムにそこまでは言い返せないはずだ。  派遣は時給がいい分、いつ切られるか分からないものなのだ。ブチくんだって、それは覚悟しているはずだ。  これはいい案かもしれない。  他には––––  システムエラーのせいにするのも悪くない。  キャットゲートを管理する仕事に、ゲート管理部がある。  彼らは、定期的にゲートに不備や故障がないかを点検する。  その点検表を盗んで、上書きをして不備があったことにする。  それを報告し忘れた管理部部長にすべての責任がいく、というわけだ。 「ムフフ」  我ながら悪代官のような含み笑いをしてしまったものだ。 言い訳はさらに思いついた。  Cランク猫のせいにする、というものだ。  この猫タウンは階級制度がある。  王様や大臣はSクラス猫。  次に、国の重要なポストについている役職猫はAランク。  シャムはAランクなのだ。  Bは一般猫。  Cはいわゆる野良猫に近い。人間の世界でいう、奴隷やホーム◯スに近い。  そのCランク猫の誰かが、無理やりゲートをこじ開けたということにするのだ。  彼らに猫権(人権)などないのだ。 「はっはっはっは」  シャムは高笑いした。  どの言い訳も完璧だ。  これでオレは責任を逃れることができるぞ! シャムはミルクを一気に飲み干した。 まずは、当番制(シフト)を改ざんするところから始めるか。うししし。  シャムは王国の管理事務所に向かった。  さいわい室内は誰もいなかった。パソコンを起動し、指球でキーボードをたたく。
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