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今回で10度目の訪問となる稔様の10畳ワンルームの惨状は、多恵子様よりお聞きしていた通りだった。
10度の訪問中、クレームで呼び出されたのは既に5回目のこと、こんなお方は初めてだった。
我が番場お掃除協会の掟として。
お仕事をご依頼され、任務完了後から二か月以内に部屋が依頼前と同等の状況となってしまった場合、アフターサービスとしてもう一度掃除します、と約束の上で契約をしている。
中村様とは本宅も含め、ここ二年程懇意にさせていただいている上客であり、細かなところまでご一緒にと仰せつかっている。
大晦日の日には、稔様と二人網戸の目まで一つの埃もなく一緒に掃除したはずなのに……。
ご一緒にお掃除ロボット初号機の一子としては、100体以上いる二号機以下に示しがつかない毎回のアフターサービス利用客なのだ。
「では、失礼いたしますね、はい稔様、エプロンをどうぞ」
まだうなだれている稔様に一子印の青薔薇エプロンを手渡すと、諦めた顔をしていつものように装着してくれた。私も色違いの赤薔薇エプロンをつけて、仕事にとりかかる。
一歩部屋の奥に進む度に、バリバリと足元で音をたてるゴミ、紙クズ、書類、チラシ。全てをなぎ倒し、踏みつけながら、ベランダへと向かう。
閉め切ったカーテンを開けると部屋の中に陽ざしが降り注ぎ、雪のように舞う埃やらチリやらが、キラキラと光る。
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