初号機の受難

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「稔様、空気清浄機機能をONにします、スイッチをお願いいたします」 「いや、だってそれグニュっとしてて、本当にもう嫌で」 「前回も前々回も同じこと仰っていましたね? でも大丈夫、二度三度スイッチを入れていたら稔様も慣れていたじゃありませんか? グニュッとした感触にもすぐにまた慣れるはずです、さあ、さあ」  私の鼻の横にある大きなホクロ型スイッチ。  恐る恐る指を伸ばした稔様は、顔を歪め覚悟を決めたように、それを押しこんでくれた。 「ごおおおおおおお」  鼻腔型空気清浄機が漂う埃、チリを勢いよく吸い寄せる。 「稔様、ごおお、窓を、ごおお、開けて、ごおお、布団を、ごおおおおおおお、干し、ごおおおおお」  空気清浄機を使いながらだとうまく指導ができない私の声を、稔様は聞きとって素直に布団を干しにベランダに出た、が。  見逃せない、絶対に見逃せないものを発見してしまったのだ。 「お布団ごおおおおおお」  慌てて稔様の手から布団を回収し、凝視した箇所、茶色い染みが布団についている、これはまるで。 「あ、ラーメンこぼしちゃって」 「やっぱラーごおおお、ベッドごおお、上ごおおおおお、」
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