初号機の受難

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 空気清浄機を回しっぱなしだと(らち)が明かない。  稔様の人差指を握ってスイッチを押させ、清浄機をオフ。 「いくらなんでも、ベッドの上でラーメンを食べられるだなんて、万が一こぼしたらなどと考えられないのでしょうか?」 「まさかねえ、こぼすなんて思わなかったので」  小さな子供のようにしょぼんと肩をすくめてらっしゃるが、稔様はもう20歳だ。成人を迎えている。  多恵子様が言っている『あの子は本当に頼りなくて』がこれだ、これなのだ、と改めて理解した。  「バンバが布団の汚れのみ手洗いして参ります、その間に稔様は床に広がった書類を集めるのですよ? いいですか? 以前のように一つ残らずですよ? 下手に隠してもバンバにお見通しなことは以前にもおわかりでしょう? わかりましたか? わかりましたね?」  ハイと小さく頷いた稔様は床上の書類を集め出す。  その間に布団を洗いに風呂場へ……。  そこで目にしたものは、惨状だった。  布団を洗う前に、風呂場を洗わねばならない事態に遭遇する。  大晦日にキレイにしたはずの風呂場は、またしても床底がヘドロ化し、ピンクやら黒のカビもあちこちに蔓延(はびこ)っていた。
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