Ash clock

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 Ash(アッシュ)を削り出すことも、綺麗な瓢箪型を作り出すことにも慣れた頃、アーシャから、人一個体分のAsh clock(アッシュ・クロック)を作る指示が出た。 「僕に出来るでしょうか?」 「出来るかどうかじゃない! やるんだ! じゃなきゃお前は、いつまでもイレギュラーのままだぞ!」  不安げな僕を、アーシャは厳しく突き放し、追い立てられるように、僕は、とぼとぼと歩き出す。  不安でいっぱいだったが、降りつもるAshの音を聞いているうちに、少しずつ気持ちが落ち着いてきた。僕を一人前にするために、根気強く教えてくれたアーシャの期待に応えたい。僕は、顔を上げた。  Ash clockを作る作業は、最適なAshを探す事から始まる。  僕はアーシャの教えを思い出し、今一番いいと思えるAshを探し、籠一杯になるまで、休む事なくAshを削った。  それを持ち帰り、確認してもらおうとアーシャへ近寄れば、彼は、プイッと僕から離れて行く。どうやら完全に一人でやれという事らしい。  僕は一人、黙々と作業をした。沢山のAshを溶かし、練り、大きな瓢箪型を形成。幾度も繰り返してきた作業だが、初めての大きさにやはり苦戦した。完成したAsh clockは、案の定、不恰好だった。  それなのに、いつの間にかそばに来ていたアーシャは、満足気な声を上げる。 「良いじゃねぇか! 」 「カイ?」 「お前の名前だ。この世界では、跡継ぎ候補が一人前になった時に、名前を送る事になっている」 「カイ……僕の名前……」 「イヤか?」  僕は、勢いよく首を振る。 「ありがとう。名前も、一人前と認めてくれたことも」  僕がアーシャに向かって頭を下げると、彼は、僕の手をとって顔を上げさせた。 「礼を言うのは、俺の方だ。良いAsh clockをありがとよ」  アーシャの言葉の意味が分からず、僕がキョトンといている間に、彼は不格好なそれを抱える様にして抱き、飛び切りの笑顔を僕に向けた。 「いいな。自信を持て。カイ! お前は、絶対に良い作り手になる」  そんな言葉を残し、アーシャの姿は、次第に溶けるように薄くなる。そうかと思えば、Ash clockの中に閉じ込めたAshが色づき始め、彼の姿が消えると同時に、赤く染まったAshが、さらさらキラキラとAsh clockの底に降り始めた。僕は、その光景をただ無心で眺め続けた。  しばらくして、静かにひとつため息を吐くと、僕は籠を背負い、熊手を手にする。  僕はカイ。個性的なAsh clockの作り手だ。 完  ⏰ 14分 ( 8,000文字)
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