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予定より下校が遅くなった。クラスが解散になった後、部室にため込んでいた私物の整頓に時間をかけすぎたのだ。歩き慣れた廊下を早足で渡る。昇降口でスニーカーに履き替える時、いつもの習慣で上履きを下駄箱にしまおうとして、もうその必要がないということに気がついた。ああ、卒業したんだなという小さな虚しさが胸をかすめる。
外に出ると、季節外れの雪がはらはらと舞い始めていた。この雪は今夜遅くまで降り続けるらしい。どうりで寒いわけだ。ぼくは手袋をはめ、駐輪場に向かった。いつもの位置に停めていたクロスバイクを引き、校門へと歩きはじめる。
校門付近の人影はなく、ぼくの目にはそれがひどくそっけない風景に映った。卒業というイベントの手前、大げさに名残惜しさを演出していた教室の雰囲気が嘘みたいだ。
でも、決められた終わりとは、大概そういうものなのだろう。あの校門をくぐれば、ぼくは高校生ではなくなる。それもまた、押し付けられた線引きだ。こうやって何もしなければ、人生なんてあっけなく過ぎていってしまう。
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