届け。

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 僕が登校拒否になってから、早くも七ヶ月が経過しようとしていた。  もともと、高校生活に希望なんて持ってはいなかった。学力どん底の僕でも、確実に入れる、という理由だけで選んだ学校。頼むから高校卒業だけはしてくれ、という親の懇願で、進学はしてみたものの、そこに並ぶのは似たような動機で入ってきた無気力な顔ばかり。教室内には、若くして人生を投げたような空気が、色濃く漂っていたのだけが、印象に残っている。  しかし、底辺校であっても、そのなかでさらに格下を見つけ出して虐めてやろう、という歪んだ覇気の発露は、どうやら僕ら世代の共通項らしく、早くも五月には、僕はたちまちその格好の餌食となった。仕方ない。休み時間も机に向かって絵ばかり描いている僕は、分かりやすいほどにクラスの中では浮いてて、狙いやすかっただろう。たとえ僕が他のクラスメイトの立場だったとしても、そうしただろうと思うほどに。  それでも、夏過ぎまでは、なんとか登校していた僕は、我ながら我慢強かったと思う。虐めといってもその内容は、あからさまな暴力や脅しなどではなく、僕にだけプリントを回さないとか、上靴を隠すとかの、小学生レベルのだったが、もともと登校する気力が無かった僕の心には十分だった。二学期になり、僕は学校を休み始めた。そして、今日に至る。    だというのに。  三好先生は、なかなかにしぶとかった。  それから数日おきに、三好先生は登校しない僕の元にやってきた。沢木先生とは大違いだ。  三好先生は家に来ると、親が居る居ないにかかわらず、ずかずかと散らかった僕の部屋に上がり込んでは、あの嬉しげな声で「林くん、今日はどうしてたぁ?」と僕に話しかけてくる。そして、その日の学校での出来事を数分喋り、それでも僕が頑なに表情を変えないでいると「じゃあ、また来るからね!」と告げて、帰って行く。  そしてGWが明け、五月中旬の今日も、三好先生は僕の部屋にいる。机に向かって一心不乱にマンガを描いている、僕を興味深げに見やりながら。
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