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それから数日。
僕は学校にも行かず、あいもかわらずネームを切っていた。締め切りは刻一刻と近づいてくる。ちゃんとペン入れしないといけない、もうそんな日程だというのに、僕はなかなか、応募作のネームを上げることが出来なかった。
気ばかり焦ってしまう日々。だけど、読み返せば読み返すほど、僕は自分の書いたネームに自信が持てなくなっていた。前までは自信を持って読めていたのに、なぜだろう。分からなかった。
「主人公が痛快に、ざまぁ、をかまして終わるラスト……。良いと思うんだけどなあ……」
僕はぼさぼさの頭を掻きむしりながらも、そう呟きながら何枚も何枚もネームを切っては放り投げた。床に、またたくまに大量の紙が降り積もる。只でさえ、とっちらかった部屋はたちまち紙で埋もれた。疲れた頭で、僕はぼんやりと、思う。
――これじゃあ、三好先生が来ても、足の踏み場も無いなあ。
そして、僕は先生の言動をふと思い出す。
――もっと、幸せにならないと。
僕は、ええいままよ、と、思い切って、ストーリーの結末を変えることにした。主人公の復讐はそのままだけど、ラストは、主人公に可愛い彼女が出来て、というように。
締め切り三日前のことだった。そして僕は死に者狂いで、応募作を仕上げることに没頭した。
だから、あの日以降、先生が僕の家を訪れなくなったことにも、まったく、気がつかなかったのだ。
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