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『コミックトリガー』への応募が終わってふぬけになっていた僕だが、季節が梅雨の時期に入る頃には、ようやく日常生活を取り戻していた。
それと同時に、僕は遅まきながら、三好先生の訪問がもう一ヶ月近くないことに気がついた。本当に、遅まきながら。
意外なことに、妙に落ち着かない自分がそこにはいた。いったいどうしたのだろう。忙しくて、来られなくなったのか。病気でも、しているのだろうか。
――それとも、もう、自分は見捨てられたのか。
そう考えると、無性に心がざわめいた。それが寂しさという感情だと、ようやく気がついたのは、梅雨が明け、夏休みが始まろうとしている頃だった。会いたかった。なんだかとにかく、三好先生に会いたかった。あの僕と話すときの楽しげな口ぶりが、懐かしくて仕方なかった。
一学期の終業式の日。
僕は、勇気を振り絞って、約一年ぶりの登校を試みた。ひさびさに制服に腕を通し、通学路を辿り、電車に揺られる。だが、高校の最寄り駅を降りたところで、足が震えて、動かなくなってしまった。
僕はとりあえず落ち着こうと、近くのコンビニに入り、ソフトドリンクのペットボトルに手を伸ばす。すると、その指先が誰かのそれと、こつん、ぶつかった。
「林くん……?!」
「え……?」
「やっぱりそうだー! ねぇねえ、めちゃくちゃ久しぶりじゃん、生きてたの?!」
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