あの日の過ち

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あの日の過ち

プルルル…プルルル… 朝、携帯電話の着信音で目が覚めた。 私は上半身をゆっくり起こし、少し痛む腰を抑えながら音のする方へ手を伸ばした。 光る画面には、"龍平さん"の文字。 着信音の主は旦那からだった。 まあ電話が来るのも当たり前か。 昨日は連絡を忘れて帰宅しなかったし。 連絡を忘れてしまった理由 それは昨日の出来事で、まさかの再会と想像もしなかった行為があったから。 「電話、鳴ってるよ」 囁くそうな低い声が響いた。 隣でモソモソと動き、程よく筋肉がついた上裸を露わにしたのは、大人になった山崎君。 学生時代の私には想像もできないだろう。 まさか数年後の同窓会で再会し、一夜を共にするなんて。 「あ、そうか電話…」 昨日のことを色々思い返していると、手がすっかり止まっていた。 「は〜いもしもし?」 私は余裕を出して、焦るそぶりを見せないようにした。 そんな私とは裏腹に、旦那は酷く焦った様子話し始める。 「藍那…?今どこにいるの?昨日帰ってこないで何してた?何か変な事件に巻き込まれたわけじゃないよね?」 「ごめんなさい。昨日ちょっと飲み過ぎちゃって、同級生の仲良い子の家に泊めてもらったの」 咄嗟にこんな適当な言い訳が頭をよぎり、真実とは異なる言葉を口にする。 あーあ、嘘ついつちゃった。 「今すぐ迎えに行くから、場所教えて」 迎えだと?冗談じゃないわ。 今の状況を見られたら完全な修羅場だぞ。 「自分で帰れるから大丈夫。だから龍平さんは家にいてね」 なんとか旦那を納得させ、そう言って電話を切った。 服を纏っていない身体はあっという間に冷えていた。 もう帰らないとな… 急いで床に散らかった自分の服を集め、帰り支度をする。 「なんで嘘ついたの?」 その言葉に、服を着ようとしていた手が止まる。 「……本当のことなんか言えるわけないじゃん」 「そっか 俺たち、不倫関係になったもんね」 不倫関係…… 確かに間違っていない。 結婚相手がいながら、カラダの関係を持ってしまったのだから。 なんであんなことをしてしまったか、今更後悔しても遅い。 あの場の雰囲気っていうか…流れ?っていうか。 旦那に嘘をついたこの瞬間、私はこの事実を隠したまま生きていくことを決心する。 絶対バレちゃいけない、秘密の関係 普通の人生を生きていた私に、偽りの仮面がつけられた瞬間だった。
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