あの日以来の、君

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あの日以来の、君

「あ〜疲れた」 体の疲れを抱えたまま、今すぐにでも閉じそうな瞼を必死に開けてなんとか帰路に着いた。 ガチャ 私は自宅に到着し、扉を開ける音で旦那に帰ってたことを知らせる。 「ただいま」 リビングへ向かうと、旦那は両耳にしっかりイヤホンをはめて、何やら携帯電話で動画を見ているようだった。 「…」 ただいまの声にも全く反応なし。 イヤホンして音を遮断しているんだから聞こえないのは当たり前か。 私に背を向けて座っている旦那はこちらを見向きもせず、動画に夢中だった。 はあ。 なんで家に帰っても安心できないんだろう。 旦那がこんな人だから?それで私が孤独を感じているから? 理由など、考えればいくつも出てきそうだった。 あーーダメだ 今日はずっとネガティブな考えになっちゃう。 疲れてるんだ、もう寝よう。 テーブルには、旦那が入れてくれたコーヒーが置いてあった。 そっとそのコーヒーを手に取り、何気なく表面を見つめた。 怒ってるような、悲しいような、そんな私の顔を反射して映し出す。 とても美しいとは言い難い。 龍平さんの馬鹿。 心の中でそう呟き、動画に夢中の旦那の背中をチラッと見る。 私はコーヒーを飲まず、そのままテーブルに置いた。 そして旦那が気づかないうちにそっとリビングを出て自室へ向かった。 そうだ、明日は山崎君が来るんだった。 山崎君のことを考えると、またモヤモヤしてしまう。 私が美容師してるって言ったっけ… やっぱり職場の場所なんて教えてないよなぁ。 そんな記憶ないし… もしかしてストーカーしてるとか? え、そんなことある? 怖!! って、勝手な被害妄想辞めろ自分〜〜 今はネットで調べればいくらでも情報が出る時代なんだし。たまたま調べた美容院のサイトで私を見つけただけかもしれない。きっとそうだ! 私は心の中でずっとそんな事を呟いては突っ込んで…を繰り返していた。 いや、1人コントかよ。 大丈夫、大丈夫、普通に仕事。普通に仕事…
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