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「ただいまー…」
そっと玄関の扉を開けて、顔を覗かせた。
「龍平さーん?」
あれ?いない?
もしかして寝てる?いや、でもさっき電話あったし…
不思議に思いながらも扉を閉めて部屋に入ると、その音に反応したのか、奥からスタスタとスリッパ音が聞こえてくる。
「おかえり…藍那」
その足音を響かせて私のところへ来た旦那。
部屋着姿のままで私の顔を見つめる。
私を見る顔は、どこか不機嫌そうで…
眉間に皺を寄せた。
「帰ってこないんなら、LINEの一通でもいいから入れてくれないと困るよ」
「こんな事があるの、珍しいね」
旦那は相変わらず冷静な口調でそう言葉にした。
その口調には、若干怒りも込められているように思えた。
あ、でもあんまり深く聞いてこないな。
私は旦那の怒りを恐れるより
昨日の出来事を深く掘り下げてこなかった事に安心していた。
友達って誰?とか女友達?とか聞かれるかと思ってたけど
どうやらそんなことはなかったようだ。
よかった、疑われなくて。
「…ごめん。次からは絶対連絡するから」
私はそう言った。
旦那は"うん"とだけ返事をし、私に背を向けてキッチンでコーヒーを淹れ始めた。
深く干渉もしないのは、やっぱり興味が湧かないからだよね。
別に興味を持ってほしいわけじゃないけど。
今の私の状況には尚更だ。だって嘘をついてるんだから……
そしてまた、いつもの静かな朝が始まる。
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