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忘れかけの記憶
「あれ、今日仕事は?」
部屋着姿のままゆっくり朝食を食べる旦那に疑問を持ち、私はそう言った。
「今日は有給だよ。あれ、言ってなかった?」
旦那は平然とそう言って黙々とご飯を食べるが、私はそんな話を全く聞いていない。
「そうなんだ。どこか出掛けるの?」
「大学の同級生に会うんだ」
「そっか。楽しんでね」
大学の同級生って誰なんだろう。
若干気になりつつも、私はそれ以上話さなかった。
…どうせ分からないし。
「ごちそうさま」
ご飯を食べ終わり、スタスタと自室へ戻って行く。
洗い物くらいしていけばいいのに。
私はコーヒーを飲みながらそう思った。
気がつけば、考えてしまうのは旦那の不満ばかり。
はぁ…
旦那が入れてくれたコーヒー。
結婚する前も、今も
旦那が唯一やってくれているのは、このコーヒーを淹れてくれるところ。
そのコーヒーが、今日はなんだかいつもより苦い。
そんな気がした。
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