忘れかけの記憶

6/6

9人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
午後19:00 やっと1日が終わりを告げた。 同時に、忙しかった分の疲れがどっと体にのしかかってくる。 「ふう〜〜あ、舞ちゃんお疲れ様」 ふと前を通りかかった舞ちゃんに声をかけると、私を見て何か思い出したかのように続けて話をした。 「さっきの電話のお客さん、白方さんのお知り合いなんですね!」 電話のお客さん…あ、仕事中のやつか。 私の知っている人?? 「あんまり聞いてなかったけど、名前は?」 そう言うと、舞ちゃんは受付に置いてあるタブレットで予約一覧を開いた。 「山崎颯太さんっていう方です!白方さんとは仲が良くて、担当にしてもらいたいって言ってましたよ!」 一覧表に載っていた名前を指さして舞ちゃんはそう言った。 ん??私の聞き違いか? いや、でも確かにここに載ってる名前は山崎颯太… え、嘘。 なんで山崎君が…… 私の職場を知ってんのよ… てか明日来るじゃん!! うわぁまじか。 忘れていた記憶が、彼の名前を聞いた途端 鮮明に蘇る。 あの日の記憶を、私はまだ忘れていない。 いや、忘れられない。 ダメだと分かっていても、彼というドロドロの沼にまんまと呑まれていった自分のこと。 心にしまっていた気持ちがまた燃え出していたような気がする。 気持ち悪いけど、なんだが気持ち良い…みたいな。 もう出会わないと思っていたのに。 これってもしかして、出会っちゃう運命的な…? いやいや、そんなことないだろ。 ただの偶然。 絶対にただの偶然だから ね…
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加