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ズズはある国に住んでいる、一人の記し手でした。
その国に住んでいる人で、記し手と呼ばれる人達のことを知らない人はきっといなかったでしょう。
なぜなら、彼らは国中を旅していて、見たことも聞いたこともないような人や、食べ物や、生き物の話を集めては、立ち寄った街で人々に次々と披露するのです。
記し手のことを冗談好きだとか、大ほら吹きの集まりだとか言って怪しむ人たちがいないわけではありませんでしたが、多くの人は自分の街に記し手が来ると、喜んで食べ物や寝るところを差し出して、代わりに、彼らに少し不思議な話をねだるものでした。
これからお話するのは、ズズがミガルドという小さな街へ立ち寄ったときの物語です。
ミガルドはいつだって薄暗い街でした。
窓から空を見ても、青空なんて指の先ほどもありません。街の真ん中に建っている鐘楼台の、ほかよりも尖った緑色の屋根に触れてしまいそうなくらい、空の低いところまで雲が浮かんでいて、太陽の光を隠してしまうのです。
少し離れたところからミガルドを見ると、そこだけ空に灰色の絵の具を落としたんじゃないかと思うくらいでした。
「あの街の人たちは、洗った服をどこで乾かしたらいいんだろう」
ズズは呆れたような声で言いました。
といっても、まだそこはミガルドから少し離れていて、ズズの周りには誰もいませんでした。
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