ズズと灰の街

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ズズ様。 この街が、街の()の様子が、気になりませなんだか。 店に入るとき、外套(マント)に乗った灰をしつこく払い落としとったじゃろ。店の外に天幕を張って、どれだけ酔いつぶれても、派手に騒いでいても決して灰が降る場所には出なんだでしたじゃろ。 ズズ様もこの街をご覧になったときに不思議でしたじゃろ。 あの、ミガルドの上にだけ、重石のように居座っとる雲の有り様を。 あれは、へえ、あたくしが50を過ぎていた時分ですからな、もう10年も前になります。 あたくしは今と変わらず、エマと統星亭を切り盛りしとりました。店を片付けとったエマが外を覗いて言うたんです。変な空ね、と。 あたくしは皿を洗っとったんですが、手を止めて外を見ようとしたんですじゃ。 そのとき、大風が吹いてきて、あたくし達は突き飛ばされたように床を転がりました。まるで嵐を3つ重ねたような風で、あたくしは店が潰れやしないか、祈るような気持ちでしたじゃ。 どれくらい経ったか、周りが静かになったのに気が付きましてな、おそるおそる街の様子を見に行きましたら、そこにおったのですじゃ。 見たことのない女でした。全身白一色の服で、赤く光る杖を持って。 ああ、これはこの女の仕業だ。 そう思って、あたくしは恐ろしくて仕方なかったですが、なんとか声をかけましたのじゃ。 あんた様、何をなすった。この街をどうなすったのかね、と。
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