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バルバロは問いが聞こえなかったようにズズに背を向けて、大きな前掛けを締めました。
「ささ、その重たそうな荷物を降ろしなされ。今日は、腕によりをかけて作りますぞ。記し手様が次の街へ行きなすったときに、聞いた人が驚くような飯を用意しましょう」
バルバロの言葉は、ズズとエスメラルダにとってまったくそのとおりになりました。
厨に入った老爺は、老いた見た目からは信じられないほど素早く動いて、次々と料理をこしらえました。
エマは本当に街中を走り回って、統星亭がはちきれそうなくらい人を呼んできましたが、それでも食べ切れないくらいの量でした。
街の人たちは店の中に入れるだけ入り、椅子が足りなくなれば地面に腰を下ろし、とうとう店に入り切らなくなると、表に降り積もった灰を掃除して、外に天幕を張り出してそこに座りました。
エスメラルダは普通の猫の振りをして(ほとんどの街で、エスメラルダは普通の猫の振りをします。その方が彼女にとっても居心地が良いですから。)、バルバロが差し出す茹でた肉をほぐしたものや、客たちが差し出すおこぼれなどをもらっては夢中で食べていました。
そして、ズズは記し手として存分に働きました。彼女は本棚の扉に掛かっていた錠前を外し、両開きの扉を開け放ちました。中には、大小様々な本がびっしりと並べられ、まるで色とりどりの壁のようになっていました。
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