ズズと灰の街

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これらは全て旅の途中でズズが記録して、まとめ上げて、本にしたものでした。その中から一冊取り出しては、ズズは本棚に(しつら)えた文机の上で開きました。 ズズは脇に置いていた三角帽を掴んで、ゆっくりと振りました。すると先端に縫い付けられた鈴がりんと鳴り、周りにいた人たちは口をつぐんでズズの方を見るのでした。 「草花は人が愛でてこそ、枝葉を伸ばし花、実を成すものと相場が決まっております。私がミガルドに至る前に立ち寄った街では、獣の姿となった草が話し、木々が歩き、見上げるような花が人を愛でておりました。あれは……」
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