純情ヤクザの不器用な初恋

ーー正気か？ヤツはマル暴のデカだぞーー
｢茨木さんが言ったんだべした。ゲイの鞠家がめんこい男の嫁こを探しているって。オヤジの息子になった紗智がこれまた別嬪なんだ。間違いなく一目見ただけで鞠家は紗智に惚れる。紗智は中国人だ。鞠家は中国語が話せる。くっつけるしかねぇべした。紗智は姐さんラブだ。姐さんの側から動く気はねぇ。鞠家は紗智のためならマル暴のデカをすぱっと辞めて福島に来る。あとはどうにかなっぺ」
ーーあのな、弓削……ーー
茨木さんにはため息をつかれたが、茨木さんは鞠家に紗智との見合いを進めてくれた。
鞠家は一生独身を貫く気でいたが、一目見て紗智が好きになり、口説き落とす気満々で見合いに臨んだみたいだ。時と場合によってはホテルに紗智を連れ込み既成事実を作り、男としての責任を取り紗智と結婚するという強行手段も考えていたみたいだが。
鞠家が若頭を快諾してくれたお陰で、念願叶い姐さんの弾よけになることが出来た。
姐さんは可愛い。ちょっとした仕草にも心臓がドキドキする。仕事そっちのけで姐さんに見惚れることなんかしょっちゅうだ。
一日中見てても飽きない。

今は離れ離れになってしまったが、姐さんのもとに一日でも早く帰れるように医者の言うことを聞いて治療に専念している。

姐さん待っててくんちょ。
絶対に姐さんのところさ帰るから。