純情ヤクザの不器用な初恋

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これは俺の心友の初恋の話しだ。 いい年したおっさんの初恋話しが苦手な腐女子の皆さんは回れ右をオススメする。 俺の心友の名前は柚原(ゆずはら)了誓(りょうせい)だ。 千里と同じ養護施設で育ち、高卒後、朝から晩まで休む間もなく働き、唯一の肉親である茜音(あかね)を育て上げ、大学にまで進学させた。 その日暮らしの苦しい生活だったが、茜音にだけはひもじい思いをさせたくなかったんだろう。欲しい服や靴があれば、値段を気にせずに買ってやった。自分は同じ服を洗濯し穴が空くまで着続けた。恋とは無縁の生活を送っていた。 カタギの柚原と、ヤクザの俺。 立場も、住む世界も全く違う俺たちの出会いは偶然だった。 本部の会合がありオヤジのカバン持ちとして上京した俺は、ティッシュ配りのアルバイトをしていた柚原とすれ違った。 そんときヤツから同じ匂いがした。 言っておくがオヤジ臭じゃねぇぞ。当時、俺も柚原もまだ二十代後半だった。 俺もガキのころ両親が離婚し、母方の祖父母に引き取られたが、その祖父母が十歳のときに相次いで亡くなり、厄介者として疎まれていた俺は、弟と親戚宅をたらい回しにされた。 腹一杯食わせてもらえず、反抗的だと一方的に難癖をつけられては、殴る蹴るは当たり前。日常茶飯事だった。 新聞配達で稼いだ僅かな小遣いも全部取り上げれた。いつか殺される。俺は、弟を連れて家を飛び出した。 あてもなくさまよっていた俺たち兄弟に声を掛けてくれたのは、たまたま散歩中だった紫さんだった。 事情を説明しなんでもするから弟と一緒にここに置いてくれと土下座して度会さんに頼み込んだ。 そして俺は弟を育てるため、13歳でヤクザになった。
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