いちごのバームクーヘンと一つの仮説

1/15
前へ
/15ページ
次へ
「本日は、ご協力いただきありがとうございます。私は、心理学科四回生の岸田青葉と申します。では、これから簡単な実験をいたしますので、アンケートのご記入をお願いいたします」  レジュメを棒読みして、岸田くんは顔を上げた。 「……あっ、すみません。事前に確認しておきたいのですが、食物アレルギーはありますか」 「え、いや、ないです」 「そうですか。では、始めます」  通された教室には遮光カーテンが締めきってあり、代わりに蛍光灯の白い明かりが灯っていた。  その教室の真ん中に、二人向かい合って座る。  光が遮られた空間は、冷たくて重たい。そして白色の蛍光灯は、くっきりと空間を浮き彫りにする。  これから人体実験でも行うのかというくらい、明るかった。 「まず一分ほど音楽を流しますので、お聴きください」  スマホを操作すると、聴き慣れたクラシック音楽が流れた。私はリスニング試験の受験生のように、一音も聞きもらすまいと音楽に耳を傾けた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加