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「本日は、ご協力いただきありがとうございます。私は、心理学科四回生の岸田青葉と申します。では、これから簡単な実験をいたしますので、アンケートのご記入をお願いいたします」
レジュメを棒読みして、岸田くんは顔を上げた。
「……あっ、すみません。事前に確認しておきたいのですが、食物アレルギーはありますか」
「え、いや、ないです」
「そうですか。では、始めます」
通された教室には遮光カーテンが締めきってあり、代わりに蛍光灯の白い明かりが灯っていた。
その教室の真ん中に、二人向かい合って座る。
光が遮られた空間は、冷たくて重たい。そして白色の蛍光灯は、くっきりと空間を浮き彫りにする。
これから人体実験でも行うのかというくらい、明るかった。
「まず一分ほど音楽を流しますので、お聴きください」
スマホを操作すると、聴き慣れたクラシック音楽が流れた。私はリスニング試験の受験生のように、一音も聞きもらすまいと音楽に耳を傾けた。
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