猫マニア

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猫マニア

猫はいい。 自由で気高くミステリアス。 まるで銀座の一流ホステスのようだ。 しかしながら、時に飼い主にしか見せない表情(かお)で甘えてくる。 あたかも純粋無垢な聖女のようでもある。 俺の親は転勤族だった。 いつでも引っ越せるようにと最小限の荷物しか持たず、常に賃貸暮らし。 ペットなど飼える状態ではなかった。 その反動からか、俺は就職して金を貯めるとすぐ一軒家を購入し、猫を飼った。 『猫と暮らす家』を全面アピールした代理店に頼んだ注文住宅は、全部屋 catwalk 完備。 ドアというドアに猫用出入り口がついている。 窓はすべて猫の形で、猫屋敷としてローカル番組で紹介されたこともある。 猫好きが高じて、俺は猫グッズの収集家としても名を知られるようになった。 茶碗やコップに猫柄がついているのは当たり前。 机は肉球型、ソファーカバーやカーテン、壁紙に至るまで猫・ネコ・ねこ。 ペット雑誌記者が猫特集と言うと我が家にやってくるほど、コレクションは揃っている。 そんな俺の元へ友人が一本の電話を寄越した。
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