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駅員に肩を叩かれ、目が覚めた。
「お客さん、終点ですよ」
目を開けると電車の乗客は誰もいなかった。
「大丈夫ですか」
ぼくは軽く頭を下げて電車を降り、駅舎を出た。外は雪が積もっていた。
朦朧とする意識の中、一生懸命に思い出そうとした。
たしか会社帰りに同僚たちと上野で飲んでいたはずだ。仕事の愚痴ばかりを聞いているうちに嫌になって、みんなと別れて飲みなおそうと、知らないバーに入った。暗くて落ち着く店だった気がする。
帰ろうと思ったのか、上野から電車に乗ったようだ。でも行き先を間違えて、こんなに雪深い駅に着いてしまった。
タクシーを呼ぼうとスマホを探したが無い、あのバーに置き忘れたか。財布は内ポケットに入っている。仕方ないのでどこかに泊まろうとビジネスホテルを探した。
歩けば歩くほど車の通行も無くなって、街灯が雪道を侘しく照らしていた。
「駅に戻ろう。あれ、何という駅だったっけ」
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