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「妹の民宿はここから四十分ほど先のスキー場の麓にあります。ちょっと揺れるけど辛抱してください。わたしも今夜は泊まるから明日駅まで送りますよ」
「ありがとうございます。その民宿にはよく泊まられるのですか」
「わたしの実家でしてね、両親が早く亡くなったので妹が後を継いでいます。当時、わたしは二十八歳ぐらいだったかなぁ、勤めていた建築会社を辞めたくなくて、大学を中退して戻って来た妹に、家業を継がせたのです。自分勝手な悪い兄貴です」
男は苦笑いをして頭を掻いた。
「罪滅ぼしも兼ねて、週末に泊まって買い出しや、家の修繕を手伝っています。あっ、露天風呂がありますから入ってくださいね、わたしが掘りました」
「楽しみです。露天風呂を作ってあげるなんて、兄妹仲いいのですね」
「私は今年四十二歳で妹は三十五歳にもなるのですが、七つも違うといつまでも可愛くてね、もっともしっかり者は妹の方ですがね」
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