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他者から見れば、有朋は孤独だったろう。親しい友と言えば隼人一人。その隼人とて、学内でも有名な、はみ出し者だったのだから。
有朋とは違う意味で、容貌故に、他者から一歩引かれ、表向きは明るく話しはするものの、心を許せる相手のいない隼人もやはり、孤独な人間と見られていただろう。
他者から相手にされぬ者同士、傷を舐め合う関係に見られていたであろうと、自覚はあった。
しかし二人は、真の友情で結ばれていた。
有朋は隼人の容姿を一切気にせずいたし、隼人も、有朋の自尊心の高さが気に障った事は無かった。
軽薄な流行や女買いに誘われた時、断った挙げ句、余計な一言、いや、三言四言言ったのが他人を遠ざける結果になっただけで、隼人からすれば、男だから。というだけの理由で遊郭に誰彼構わず誘う連中の方が、苦手だった。
と、短い間、思い出に浸っていたその時、乱暴に扉が開かれ、一人の男が飛び込んで来た。
「来て下さい!」
何事かと目をやると、昨日会ったばかりの、義礼の運転手。
「どうしました?」
「相馬さんに、長瀬様を呼んで来るよう頼まれまして」
「相馬に?」
何の用だろうか?
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