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悠々たる足取り、自信家だと思わせられる余裕の表情。
隼人の言う通り、自惚れの強さは、無言でさえ人に知らせる。
いや、むしろ言葉を発すれば、一見謙虚な有朋のこと、たちまち性格を覆い隠してしまうことだろう。
似ていると言われたせいだろうか、有朋と比べ、張り合おうとしている自分に滑稽さを感じながら、観察を続けた。
有朋が門を潜るなり、義史が飛び出し、無言のまま、背広の衿元を乱暴に掴み、捻り上げた。
唐突な暴力に、しかし、有朋は冷静である。
口元には嘲笑気味の笑顔を浮かべ、義史を見つめる。
「なんの真似ですか?
まずは理由を聞かせて下さい」
「映子のことだ」
男にしては高目の有朋の声は良く通り、大して大きな声を出しているわけでもないのに拘らず、圭にも聞き取れる。
「あんなことを教えたのは、君だと言うじゃないか」
「あんなこと?
あぁ、あのことですか。
なにか問題ありましたか?」
有朋の言葉で、義史の手に、力が更に加わる。
「問題だと?
常識で考えてみろ!
若い娘に話すことか!」
「どういう意味でしょう。
猥褻な話をしたわけでもあるまいし、こんな狼藉を働かれるいわれはありません」
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