義史

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 「学生時代は、敵の多い男だった。  軽蔑の感情を隠さないからね」 「長瀬さんはどうして、敵の多い方と親しくお付き合いなさってらしたのですか?」 「相馬が俺を軽蔑しなかったのが、第三の理由。  第二に、俺の容姿に対して、全く興味を示さなかった」 「では、第一は?」 「相馬と話しをするのが、楽しかったからさ」  隼人は、弁護士を目指していただけに、犯罪に興味があったようだ。  しかし、親からの期待の為、あるいは出世の為に弁護士を目指す学生の中においては、浮いた存在であったのだとか。  大学三年の春、図書館で、隼人が手にしていた犯罪実録に、有朋が興味を示したのをきっかけに、友情が始まったのだと、懐かしがる声で、教えてくれた。 「あの頃から頑なで、自意識過剰な性格ではあったけれど、それを上回る魅力があったことは確かなんだ。  あいつ、どうやら君に興味を持ったみたいだね。  いや、おかしな意味じゃないよ。根は悪い男じゃないから、心配しなくていい」  慌てた風で、弁解じみたことを言う。    やはり、有朋は今でも、大事な友なのであろう。
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