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「外部の人間ではないな」
夕食を終えてお茶を飲みながら、隼人は断定的に言った。
「根拠は?」
「まず、あの家の構造を考えれば、わかるだろう?
義史邸のように全て洋室にしていれば、扉だから部屋の音は外に漏れず、鍵も掛かる。
しかし、義礼邸は全て和室だ。
殆どの部屋が紙か硝子の障子で、唯一の例外は彬子夫人の部屋だけ。
それでも襖なんだ」
義礼の寝室は書斎の奥で窓も無く、廊下に面してもいない。
書斎は、障子の真ん中辺りは硝子張りで、中が確認できる。
そうでなくとも、人の影が映るのだ。
一人暮らしならともかく、高林家には、家族もいれば、使用人もいる。
「まぁ、確かにな」
「どうでしょう。
資産家が殺されそうになった。
となると、まず疑って見るべきは、被害者がいなくなって得をする人間です。
まず、彬子夫人はあり得ません。
義礼氏が亡くなれば、未亡人としてつましく生きていくことは可能でしょうが、実家への援助は期待できないでしょう。
次は相馬さんですが、養子縁組が終わった後ならともかく、まだなのですから、今死なれては困るのです」
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