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運転手に付いて屋敷に向かっていると、強面の警察官が、こちらに向かって来るのが見えた。
屋敷に入る人間を監視しているのだろうか?
「誰だ」
「探偵さんです。相馬様に頼まれて、迎えに参りまして」
運転手はビクビクと、体を縮めて掠れ声を出す。
「探偵が何の用だ」
問いたいのは隼人の方だった。
一体いつ、自分は探偵になったのか。
「相馬君を呼んでくれませんか? 自分も詳しい説明を受けていないので」
融通の利かなさそうな警察官を、見下ろし、威嚇する。
運転手はオロオロしながらも、屋敷に向かった。
隼人を睨みつけながらも警察官は、文句を言えないらしい。
権力を笠に着た連中からしてみると、名を馳せる実業家の秘書を呼びつける相手に反論するのは難しいのだろう。
警察官は言葉にはしないが、隼人をただ、憎たらしそうに睨め付ける。
鬼瓦のような厳つい顔が、更に、恐ろしい顔になっている。
その執念深さには、怒りを通り越して、呆れてしまった。
「長瀬さん」
挨拶も無しに、有朋の声が隼人を呼ぶ。
「じゃ、失礼しますよ」
目の前を通り過ぎようとする隼人に、警察官の低い声。
「ふん、異人めが」
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