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「分かった。
ではまず、ご家族に話を聞きたいのだけど」
「彬子さんは今無理ですが」
「彬子さん?」
「奥さんですよ。
副社長なら」
「副社長?」
「社長の弟です。名は義史。妻は咲江。一人娘の映子の三人家族です。
一旦、外に出ます」
そこ。と、有朋は玄関手前に、右手に続く通路の扉を指さした。
「あの扉の向こうが副社長宅ですが、今は閉じられています」
「同じ間取りなの?」
「はい。線対称になっています」
外に出る。古い和館が目に飛び込む。本邸らしく見えるが、人気はない。
義礼の住まいは外から見れば、大きな一つの家に見えるが、扉が二つある、変わった造りであった。
今、出てきたのと全く同じ扉に向かい、ベルの釦を押した。
「向こうの日本屋敷には、先代がお住まいでした。
こちらは、副社長の結婚に合わせて建てられたのです」
「豪勢だね」
扉が開いた。
使用人らしい若い娘が、怯えた顔で隼人を見、続いて、有朋に視線を向けた。
「社長の件で、皆さんに話を聞きたい」
はぁ。と、娘は困った様に、再び隼人を見た。
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